2018年3月に始まった「吉祥寺ハニカムプロジェクト」は、吉祥寺をはじめとする都市での養蜂活動を通して自然と共生するまちづくりをめざしています。
2019年3月からは、ミツバチがつなぐ中央線マーケット「COMMUNITY STAND」を吉祥寺駅前にて開催。中央線沿線で地域に根ざした活動をする方々と近隣に暮らす方々のコミュニティを拡げ、2020年10月より武蔵小金井駅前での開催をスタートしました。
出店者の「forestmam(フォレストマム)」さん(以下、フォレストマム)は、武蔵小金井に店舗を構え、ヴィーガンでグルテンフリーのマフィンが人気です。
今回は、フォレストマム店主の澁谷さんに、お店を始めたきっかけや地域とのつながりについて伺いました。
お菓子を通じた憩いの場をつくりたい
実は、フォレストマムがスタートした当初、提供しているお菓子はヴィーガンやグルテンフリーではありませんでした。
遡ること、20年。澁谷さんは看護師、夫は会社員をしていましたが、バブルが弾けた後に「もっと人に関わる、食に関わる仕事がしたい」と思うようになったといいます。そこで一念発起をし、武蔵小金井に2人でカフェを開業しました。
食や料理に関わる仕事は夫婦ともに未経験でしたが、もともとお菓子作りが好きだった澁谷さんがお菓子の製造を担当することに。
「フォレストマム」は、もともとカフェで販売するお菓子につけた名前。森の中で小動物が休みにやってくる泉のような「憩いの場」をカフェで実現できたら、という澁谷さんの思いから名付けられています。
きっかけは、アレルギーを持つ子どもの来店
そんなフォレストマムがレシピを見直すことになったきっかけは、ある日カフェに来店した親子でした。
提供するお菓子の種類も豊富になり、お客さんにお菓子を喜んでもらえることも増えて自信がついてきた頃。しかし、来店したお子さんは、カウンターの前で泣き出してしまいました。
話を聞くと、そのお子さんには食物アレルギーがあることが分かりました。「お菓子を食べたい」とせがまれても、お母さんは食べさせてあげることができなかったのです。
「その時に、世界観が変わりました。お菓子は場を和ませたり、人を幸せにしたりする道具だと思っていたけれど、ある人たちにとっては過酷なものになりうると気付いたんです」
試行錯誤を繰り返し、独立
自分のお菓子で子どもを泣かせてしまった。そんな罪悪感のような感情が生まれ、食物アレルギーがある人でも食べられるお菓子を作ろうと決心したといいます。
7大アレルゲンに含まれる卵・乳製品・小麦のうち、まずは卵を、その次に乳製品をレシピから抜き、代替食材を使ったお菓子作りに挑戦しました。
「でも、最初は美味しくなかったんですよ」と正直に話す澁谷さん。
マクロビオティックのレシピを参考にして作ってみても、バターや卵を使ったお菓子の食感や風味を再現することに苦労しました。
また、ヴィーガンという選択がまだ広く知られていなかった当時にはお客さんにも受け入れてもらいづらく、「私はバターの香りがするお菓子が好き」と言われてしまう始末。
そんな試行錯誤を繰り返しながら、8年前に夫のカフェから独立し、フォレストマムとしての店舗を武蔵小金井に構えました。
当時を振り返って、澁谷さんはこう語ります。
「売れ残ってしまうケーキを泣く泣く廃棄したり、経営のために切り詰めたりすることは本当に辛かったですよ。それでも、応援してくれる人や、アレルゲンフリーのお菓子を必要としている人がいる。儲からなくても続けていくことができればそれでいいんだというモチベーションを持って、諦めませんでした。」
人気のマフィンは、色鮮やかで種類豊富
開店当初に提供していたヴィーガンのお菓子には小麦を使用していましたが、開店から1年ほど経つと、「小麦を使わないお菓子はありますか?」という問い合わせが増えてきました。
世界的にも小麦アレルギーの人が増えているという事実を知り、「じゃあ、小麦も原材料から抜いてみよう」と思い立った澁谷さん。こうして、ヴィーガン&グルテンフリーという現在のフォレストマムの商品展開になりました。
フォレストマムの人気商品である米粉のマフィンは、色鮮やかな見た目や、意外な食材の組み合わせが特徴的。しっとりした生地が美味しいマフィンは、ヴィーガンでグルテンフリーだとは思えないほどです。
たくさん種類を用意して、選んでもらえるように意識しているラインナップには、季節ごとに新しいメニューが追加されます。
味のアイデアは、お店のスタッフに意見を聞いたり、ヴィーガン・グルテンフリーに限らずさまざまなお菓子を買って研究し、トレンドや色合いの参考にしているんだとか。
地域内のつながりも、多方面のつながりも大切に
関わり方は変われど、地域とのつながりを大切にお店を運営してきた澁谷さん。開店当初は、食で地域を盛り上げたいメンバーと集まり、お店の隣の駐車場でイベントを開催したこともありました。
開店から8年経った今、吉祥寺ハニカムプロジェクトやマルイでの出店など、地域外での活躍も増えたフォレストマムさん。遠くからお店に来てくださるお客さんも増えたと言います。
「地域内での横のつながりも大事だけど、多方面のつながりもすごく大事だと思っているんです。別の地域からフォレストマムに来てくれたお客様が、武蔵小金井の他のお店にも寄ってくれるようになれば、結果的に地域に貢献することになるんじゃないかな。」
さらには、小金井市の食育の取り組みにも関わっているという澁谷さん。
食物アレルギーについて、飲食事業者と消費者双方の知識のギャップを埋めるための周知・広報活動を行っています。
初心にかえって、憩いの場所をつくる
最後に、フォレストマムの今後の展望を伺いました。
お店では澁谷さんのお子さんや、小麦アレルギーのお子さんを持ち、お客さんからスタッフになった方も働かれていますが、今後はさらに「若い人たちが働きやすい環境を作りたい」といいます。
現在、移転先を探しているというフォレストマム。移転後はスタッフがそれぞれ得意な事を活かし、グルテンフリーの食事を振る舞えるキッチンやイートインスペースを併設するなど、夢は広がります。
「初心にかえって、憩いの場所になるようなお店を作れたらいいなと思います」
そんなフォレストマムのこれからが楽しみです。
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forestmam(フォレストマム)
Instagram: @forest_mam
店舗:〒184-0013 東京都小金井市前原町3-41-28
営業日:火・水・木・金
営業時間:11:00〜18:00
写真:フォレストマム提供
文:松丸里歩
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